ドライアイで視力が落ちる!(寄稿)
「ドライアイで視力が落ちる!(南青山アイクリニック東京 戸田郁子院長 寄稿)」
ドライアイとは、「眼が乾く」状態だと漠然と想像する人も多いと思いますが、専門的には「様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼の不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある。」と定義される立派な病気です。
眼の表面の涙の層が一定時間きちんと形成されているかがポイントです。簡単な自己チェックとしては、眼を5秒開け続けられない人は、ドライアイの可能性が高いです。
ドライアイの主な症状は、単に「乾く」だけでなく、「眼の疲れ」そして「見えにくい(視力の低下)」という症状が意外に多いことがわかっています。
ドライアイは日本国内の患者数が2000万人以上いると推定されている、とても多い疾患です。失明するような疾患ではないですが、毎日の症状でイライラし、QOLが落ちるため軽視できません。
視力低下は意外な症状かもしれません。しかし、涙液の層が眼の表面に定着しないと表面は凸凹になって、光がまっすぐに眼の中に入りません。そうすると「見え方」が悪くなるのです。
この状態を起こす原因は、①まずは涙そのものの質です。涙は主に、水、油、ムチンという蛋白から成り立っていますが、このいずれかの量や質が悪くなると、涙は眼の表面に留まらなくなります。
②次の要因は環境要因です。室内の湿度の低下や、PC、読書、運転等の「作業に集中すること」で瞬きが減少し、涙は不安定化します。瞬きは涙を眼の表面に再構築する重要な動作で、安静時は3秒に1回瞬きをしています。
③さらにコンタクトレンズの使用も眼の表面の涙の蒸発を2倍に高めると言われており、眼がとても乾きやすくなる原因です。
ドライアイで「見え方が悪くなる」のは本当に不愉快で不便なものです。
これを解消するドライアイの治療は様々なものがありますが、まずは点眼液による補給でしょう。しかし、点眼薬は忙しい日常でそうそう頻繁にさせないと思います。その場合は保護用眼鏡がとても有効です。普通の眼鏡をかけるだけで、眼の周辺の湿度が上昇します。
また、もっと簡単な自己ケアは、意識的に瞬きをしっかりする、まぶたの周辺に存在する油の腺を柔らかくするために眼を温める、などの方法も試すといいと思います。
運転という作業はとくに集中して眼を開け続けるため、ドライアイの方は運転中の視力が悪くなることが知られています。ドライアイの症状がある方は、運転中はコンタクトレンズではなく、眼鏡を使用することで、快適で安全な運転につながると思われます。
ライフシーンによって、眼鏡とコンタクトレンズを上手に使い分けるといいですね。
(医療法人社団 南青山アイクリニック東京 戸田郁子院長 寄稿)