白内障手術と術後の見え方 (寄稿)
「白内障手術と術後の見え方 (南青山アイクリニック東京 戸田郁子院長 寄稿)」
外界からの情報の約80%は目からの情報と言われています。
したがって、「ものが見えにくくなる」と、生活の質が大きく落ちると考えられます。
加齢とともに増えてくる視力低下の最大の原因は白内障です。
個人差がありますが、50歳をすぎると白内障(水晶体の濁り)が出てきます。
症状は、初期には「なんとなく見えにくい」「まぶしい」「メガネやコンタクトが合わなくなった」というものから、中期以降は「視力低下」「かすんでいる」「すりガラスを通して見ているみたい」などが出てきます。
現在のところ、白内障の唯一の治療は手術です。
濁った水晶体を取り除き、人工の水晶体(眼内レンズ)に入れ替えます。
白内障手術は眼科の手術の中で一番多い手術で、日本国内で年間100万件行われています。
超高齢社会に伴って、今後増加すると考えられます。
手術は片眼15分位の外来手術(入院が不要)で、痛みはほとんどなく、通常は数日でよく見えるようになります。
濁った水晶体が透明な眼内レンズに交換されますので、明るくくっきり見えるようになります。
ただし、最近は眼内レンズにもその機能によっていくつかの種類があり、どのレンズを選択するかで、術後の見え方が変わってきます。
一般的な眼内レンズは「単焦点レンズ」と言って、一箇所にピントが合うレンズです。
健康保険が適用されますので、3割負担の方で片眼45,000円くらいです。
このレンズは、たとえば遠くにピントを合わせたら、中間(パソコンなど)や近く(読書など)を見るためには眼鏡が必要になります。
逆に近くにピントを合わせると、中間や遠くを見るための眼鏡が必要になります。
単焦点レンズの場合、必ずどこかの距離を見るのに眼鏡は必要になりますが、ピントを合わせた距離はしっかりクリアに見えます。
一方、単焦点レンズに対して「多焦点レンズ」というものもあります。
このレンズには、ピントが2箇所(遠近)、3箇所(遠中近)にあるもの、あるいはピントの幅が広い(遠方〜中間、中間〜近方)といったものがあります。
健康保険は適用されません(自費)ので片眼40万〜60万円と高額ですが、一部のレンズには先進医療が適用されます。
多焦点レンズを入れると眼鏡の必要性が少なくなり、夢のようなレンズのように思われますが、欠点もあります。
たとえば、暗いところで見にくいとか、光がにじむとか、うまく遠近にピントが合わない、ということが起こる場合があります。
個人の目の状態やレンズの種類によってその方に「合う」「合わない」がありますので、眼内レンズを選択する場合は担当の先生の話をよく聞いてから決めることをおすすめいたします。
医療法人社団 南青山アイクリニック東京 戸田郁子院長 寄稿
J1003U1N-0308/2019-2-15